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法規制解説

製品に含まれるPFASはどこまで調査対象になるのか(2026年版)

調べる先は水道水ではなく自社の部品表です。撥水加工とフッ素樹脂がどこに入っているかを先に押さえると、法域ごとの期限は後から当てはめられます。

PFASで検索すると、上位に出てくるのは水道水と地下水の話です。基準値、暫定目標値、浄水器。担当者が読みたいのはそこではありません。知りたいのは「うちが売っている部品に入っているのか」「取引先から来た調査票にどう答えるのか」です。

この記事は製品含有だけを扱います。水質の数値は最後に一度だけ出しますが、それは「別の話である」ことを明示するためです。混同したまま社内に報告すると、関係のない部署が動き、必要な部署が動きません。

水質のPFASと製品含有のPFASは、義務の相手が違う

同じPFASという言葉でも、二つの制度はつながっていません。

  • 水質の規制は、水道事業者や排水を出す事業場に向いています。測る対象は水です。
  • 製品含有の規制は、製品を作る・輸入する・市場に出す事業者に向いています。測る対象は成形品や化学品そのものです。

自社が部品メーカーで、工場排水にPFASを使っていないなら、水質基準の改正は直接の義務を生みません。一方で、撥水加工を外注している繊維部品が一点でもあれば、製品含有のほうは確実に射程に入ります。社内の会議で「PFASの規制が強化された」とだけ共有すると、この区別が落ちます。

もう一つ、PFASという語が指す範囲は法域ごとに違います。EUの制限提案は10,000物質を超える規模で捉えており、日本の化審法はPFOS、PFOA、PFHxS関連物質という個別の指定で動いています。米国の州法は「意図的に添加されたPFAS」という捉え方をします。「PFASは規制されているか」という問いには、どの制度の話かを決めないと答えが出ません。

自社製品のどこに入りうるか

先に当たりをつけます。下の表は、規制の議論で実際に論点になっている用途と、日本の化審法で輸入禁止製品に挙がっている品目から起こしたものです。部品表を横に置いて、該当する行があるかを見てください。

部位・材料具体例社内で最初に聞く先
撥水撥油加工の繊維作業衣、フィルター布、テント地、シート材資材(生地の仕入先)
床材・敷物撥水加工された床敷物、防汚カーペット総務・設備(自社使用分)/設計(製品組込分)
衣類撥水撥油加工衣服、ユニフォーム資材
半導体プロセス材料レジスト、反射防止剤、エッチング剤製造技術(工程で使う薬剤)
金属表面処理めっき用表面処理剤、金属エッチング剤めっき外注先の窓口
消火設備消火器、消火薬剤総務・安全衛生
フッ素樹脂部品シール、ガスケット、Oリング、パッキン設計(材質指定の根拠)
電線・ケーブルフッ素樹脂被覆のケーブル、絶縁チューブ設計・購買
潤滑剤フッ素グリース、離型剤保全・製造
食品接触材料耐油紙、離型加工、コーティング容器品質保証
医療機器チューブ、コーティング、カテーテル部材薬事・品質保証
PFASが入りうる部位と、社内で誰に聞くか

実務で見落とされやすいのは、下から三つです。潤滑剤と離型剤は「製品に残らない」と思われがちですが、離型剤は成形品の表面に移行します。食品接触材料は、製品そのものではなく包装や梱包材として入ってきます。フッ素グリースは保全部門が現場判断で銘柄を変えていることがあり、購買記録に残っていません。

もう一点、フッ素樹脂という言葉で括られている部品は、設計図面に材質記号だけが書かれていて、誰がいつなぜその材質を選んだのかが残っていないことが多い。ここは自社は何を管理すればいいのか(対象範囲の決め方)で扱った「対象範囲の線引き」と同じ問題です。まず部位を挙げ、次に材質を確認し、最後に法域を当てはめる順で進めます。

EU:制限提案は2026年3月にどこまで進んだか

EUの広範なPFAS制限提案は、オランダ・ドイツ・デンマーク・ノルウェー・スウェーデンの5カ国が作成し、2023年1月にECHA(欧州化学品庁)へ提出したものです。対象は10,000物質を超えます。個別物質を狙い撃ちするのではなく、物質群としてまとめて制限する構造になっています。

2026年に入ってから、審議は次のように進みました。

日付できごと
2023年1月提案5カ国がECHAへ制限提案書を提出
2026年3月2日RAC(リスク評価委員会)が最終意見を採択
2026年3月10日SEAC(社会経済分析委員会)が草案意見に合意
2026年3月26日両委員会の意見を公表、60日間のパブリックコンサルテーション開始
2026年5月25日パブリックコンサルテーション締切
2026年末(見込み)SEAC最終意見の採択と、欧州委員会への提出
EU PFAS制限提案の2026年の進捗

この先の手続きは、欧州委員会が最終意見を受け取ってから3か月以内に改正案を作成し、加盟国の特定多数決にかけるという流れです。特定多数決は、賛成する加盟国が55%以上であり、かつその国々の人口がEU人口の65%以上を占めることが条件になります。つまり「委員会が出せば決まる」わけではありません。

RACとSEACで結論が割れている

二つの委員会の意見は、同じ方向を向いていません。ここが2026年時点で最も重要な点です。

  • RAC(リスク評価委員会)は、リスク管理の観点から全面禁止のほうが有効だという立場です。用途別の除外を認める場合には、厳格なリスク管理措置と、排出管理計画および報告を条件とすべきだとしています。
  • SEAC(社会経済分析委員会)は、全面禁止は比例性の観点から妥当でない可能性が高いとしています。用途別の除外を支持する一方で、期限を切らない無期限の除外には懸念を示しています。

読み方はこうです。何らかの制限が入る方向は動かない。しかし「全面禁止か、用途別に除外を積むか」はまだ決着していない。用途別除外になった場合でも、無期限の除外は通りにくい。自社の用途が除外対象になるかどうかを待つより、除外が付いても期限付きである前提で代替の検討を始めるほうが、時間の使い方として無駄がありません。

論点として名前が挙がっている分野は、繊維、食品接触材料、金属めっき、化粧品、スキーワックス、医療機器、電子機器、建設製品、潤滑剤です。先ほどの表と重なる部分が多いことが分かります。

未確認

制限が施行された場合の移行期間(猶予年数)の具体値は、2026年9月時点で確認できていません。「何年後から使えなくなる」という数字を社内資料に書くのは避けてください。現時点で確かなのは、SEAC最終意見と欧州委員会への提出が2026年末見込みであること、その後に委員会が3か月以内に改正案を作ることの二つです。

日本:化審法のPFHxS指定で、輸入が止まる製品がある

日本では、PFHxS(ペルフルオロヘキサンスルホン酸)関連物質を化審法(化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律)の第一種特定化学物質に指定する手続きが完了しています。根拠は2022年6月のストックホルム条約第10回締約国会議の決定です。

  • 2025年12月12日:閣議決定
  • 2025年12月17日:政令公布
  • 2026年4月17日:対象117物質を確定する省令を公布
  • 2026年6月17日:第一種特定化学物質の指定、輸入禁止製品の指定、取扱基準が施行

第一種特定化学物質に指定されると、製造と輸入が原則禁止になります。そして、その物質を使用した特定の製品についても輸入が禁止されます。ここが製品含有の担当者に直接効いてくる部分です。

#製品想定される社内の接点
1撥水・撥油加工生地資材、縫製外注
2金属エッチング剤製造技術、外注加工先
3半導体エッチング剤製造技術
4めっき用表面処理剤めっき外注先
5半導体用反射防止剤製造技術
6半導体用レジスト製造技術
7撥水・撥油剤/繊維保護剤資材、後加工外注
8消火器・消火薬剤総務、安全衛生
9撥水・撥油加工衣服資材、購買
10撥水・撥油加工床敷物総務、設計
化審法でPFHxS関連物質の使用が理由で輸入禁止となる10製品

自社が輸入者でなくても、仕入先が海外から調達している場合は供給が止まる可能性があります。「規制対象かどうか」だけでなく「調達が続くかどうか」を購買の視点で見る必要があります。特に4番のめっき用表面処理剤は、めっき外注先の薬剤選定に依存しており、自社の図面には現れません。

PFOSは2010年に、PFOAは2021年に、すでに第一種特定化学物質になっています。つまり日本の製品含有規制は、物質を個別に足していく形で動いてきました。次にどの物質が来るかは条約側の議論に連動します。

水道水質基準の改正は、製品含有とは別枠

2026年4月1日から、PFOSおよびPFOAが水道の水質基準項目に追加され、合計50 ng/Lという基準が適用されています。これは水道水の話であって、製品に含まれる量の基準ではありません。

製品含有の担当者がこの数字を使う場面はほとんどありません。取引先から「50 ng/L以下であることを証明してください」という依頼が来た場合、それは水質の基準を製品に当てはめようとしている誤りです。依頼元に、対象が製品なのか水なのかを確認してください。この種の取り違えは、SDSとchemSHERPAは何が違うのかで扱った「文書の目的を取り違える」のと同じ構図です。

米国:連邦の報告義務と、州ごとの販売規制

米国は二層になっています。連邦のTSCA(有害物質規制法)が過去分の報告を求め、州法が販売そのものを制限します。中小の部品メーカーが先に影響を受けるのは、実は州法のほうです。

TSCA第8条(a)(7) 報告規則

PFASを製造または輸入した事業者に、過去分の情報報告を求める規則です。提出開始日は何度か変更されており、2026年4月13日に官報掲載され同日発効した最終規則によって、現在は次の形になっています。

  • 提出開始日は「2027年1月31日」または「後続の最終規則の発効後60日」のいずれか早いほう
  • 提出期間は、開始日から6か月
  • 小規模事業者であって、かつ輸入物品のみを報告する者は12か月

輸入物品というのは、製品そのものを輸入している場合です。日本の部品メーカーが米国子会社や商社を通じて製品を出しているとき、報告義務を負うのは米国側の輸入者になります。ただし、輸入者から「この部品にPFASが入っているか」という照会が来ます。実務上の負担はそこで発生します。

ミネソタ州(Amara's Law)

販売の可否に直結する規制です。

  • 初回報告期限は2026年9月15日、以降は毎年2月1日
  • 対象は、2023年7月1日以降に製造され、州内で販売等される製品
  • 2032年までに非必須用途のPFASを全廃
  • 内部・電子部品についての除外規定がある
  • CUU(Currently Unavoidable Use、現時点で回避不可能な用途)規則は行政法判事が不承認としたが、2026年の期限は現状維持

除外規定があることと、CUU規則の手続きが止まっていることは、分けて理解してください。除外があるから対象外だと決め打ちすると、後で確認を求められたときに根拠が出せません。

メイン州

段階的に範囲が広がる設計です。

適用日対象
2026年1月1日清掃製品、調理器具、化粧品、歯間清掃用品、児童用品、生理用品、繊維製品
2029年1月1日人工芝、厳しい湿潤環境用アウトドア衣料
2032年1月1日意図的添加PFASを含む全製品(CUU認定による除外あり)
2040年1月1日空調・冷凍機器および冷媒・断熱材
メイン州のPFAS販売規制の段階

運用の細目を定める改正Chapter 90規則は2025年10月7日に施行されています。2032年の行に「全製品」と書かれていることが要点です。自社の製品カテゴリが最初の行に入っていなくても、2032年で合流します。

いま何をするか

期限の一覧を作るだけでは何も進みません。順番があります。

1. フッ素樹脂部品を棚卸しする

部品表から、材質欄にフッ素樹脂に類する記載がある行を抜き出します。PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF、FKM(フッ素ゴム)といった記号が手がかりです。抜き出したら、次の三つを埋めます。

  • その部品の供給元
  • 材質を指定した理由(耐熱、耐薬品、摺動、シール性など)
  • 代替を検討したことがあるか

三つ目が空欄のままの部品は、いざ制限が来たときに設計変更の検討がゼロから始まります。理由が「昔からこれ」の場合、実は代替可能なことがあります。

2. 仕入先への照会は、法域と用途を書いて出す

「PFASは含まれていますか」とだけ聞くと、返ってくる答えは使えません。PFASの定義が相手と自社で違うためです。照会文には次を入れます。

  • どの制度の話か(EU制限提案/化審法/米国州法のどれを見ているか)
  • 対象の品番と、自社での使われ方
  • 回答してほしい粒度(含有の有無だけか、物質名と含有率まで必要か)
  • 回答期限と、回答できない場合に連絡してほしい旨

切り出しの例です。

平素よりお世話になっております。製品含有化学物質に関するお問い合わせです。 対象品番:(品番/図番) 背景:弊社納入先より、PFASに関する含有調査の依頼を受けております。日本の化審法における第一種特定化学物質(PFOS・PFOA・PFHxS関連物質)への該当有無を確認する目的です。EUの制限提案や米国州法については、動向が確定した段階で改めてご相談いたします。 ご回答いただきたい内容:上記3物質群について、意図的な添加の有無。添加がある場合は物質名と含有率。 ご回答期限:(日付) ご不明な点、または現時点で回答が難しい場合は、その旨だけでもご返信ください。こちらで代替の確認方法を検討いたします。

最後の一文が効きます。「回答できない」という回答を認めると、無回答で止まる件数が減ります。返信が来ないときの進め方は返ってこない調査依頼の督促テンプレート3段階に文面ごと置いてあります。

回答が得られない場合の代替として不使用証明書を使うときは、範囲の書き方を誤ると意味がなくなります。書式は不使用証明書と非含有証明書の違い、そして書き方を参照してください。

3. 分析にかける前に、費用を把握する

仕入先から回答が出ず、かつ取引先への回答期限が動かせない場合、分析という選択肢があります。2026年9月時点の税抜・1検体あたりの実勢は次のとおりです。

2.5〜3.8万円製品・樹脂中のPFOS/PFOA三晃技研工業 各25,000円、JTC 単独30,000円・併合38,000円
2.8〜3.0万円水質2項目食環境衛生研究所 28,600円(税込)、3項目 30,800円
5.5万円消火剤食環境衛生研究所。納期10〜15営業日

測れるのは基本的にPFOSとPFOAです。10,000物質を超えるEU提案の全体を分析で押さえることはできません。分析は「疑わしい一点を潰す」ための手段であって、網羅の手段ではありません。ここを取り違えると、費用だけかかって証明にならない書類が増えます。費用の全体像は分析費用の相場(RoHS・SVHC・PFAS/2026年実勢)に並べてあります。

4. 記録の形を今のうちに決める

PFASは今後も物質が追加されていく領域です。今回調べた結果を、品番単位で引ける形にしておかないと、次の追加のたびに同じ作業をします。保存するのは次の3点セットです。

  • 仕入先からの回答(原本のまま)
  • 自社の判断とその根拠
  • 判断した日付と、そのとき参照した制度の版

この形にしておくと、物質が追加されたときの影響調査が短時間で終わります。手順はSVHCが追加された時の影響調査を1日で終える手順と同じ考え方です。管理対象物質リストとの突合が必要になった場合は管理対象物質リストはどこを見ればいいのかを見てください。

よくある取り違え

  • 「フッ素樹脂だからPFASだ」と決めつける。フッ素樹脂はPFASの議論の対象に入っていますが、どの制度でどの扱いになるかは制度ごとに違います。制度を特定せずに結論を出さないでください。
  • 「意図的に添加していないから対象外」と即答する。米国州法は意図的添加を基準にしていますが、化審法の輸入禁止製品は製品カテゴリで指定されています。基準が違います。
  • 「水質で50 ng/Lなので製品も同じ」と換算する。換算できません。
  • 「EUで決まってから動けばよい」と待つ。日本の化審法の施行日は2026年6月17日で、すでに過ぎています。

未確認として扱っていること

未確認

次の点は2026年9月時点で確認できていません。社内資料に書く場合は未確認と明記してください。 EU制限提案が施行された場合の移行期間の具体的な年数。 EU制限提案の最終的な形(全面禁止か用途別除外か)と、除外が認められる用途の範囲。 米国TSCA第8条(a)(7)の提出開始日を左右する「後続の最終規則」の内容と時期。 日本で次に第一種特定化学物質へ追加される物質。

読み終えたあとの一手

この記事を読んで最初にやることは、部品表を開いて撥水加工とフッ素樹脂の行を数えることです。ゼロなら、今回は静観で構いません。一つでもあれば、その部品の供給元に照会を出すところから始めます。制度の期限を追うのは、自社に該当があると分かってからで間に合います。

取引先から「PFAS不使用証明書」を求められました。どう書けばよいですか

証明の範囲を先に確定させてください。PFASという語が指す範囲は制度ごとに違うため、範囲を書かずに不使用と書くと、後でどの物質についての証明だったのかが争点になります。実務的には「化審法第一種特定化学物質であるPFOS・PFOA・PFHxS関連物質について、意図的な添加はない」というように、物質と根拠法を特定して書きます。取引先がEU制限提案を念頭に置いている場合は、対象が10,000物質を超えるため全物質についての不使用は証明できない旨を、あわせて伝えてください。

水道水のPFAS基準が変わったと聞きました。うちの製品にも関係しますか

2026年4月1日施行の水道水質基準(PFOSおよびPFOAの合計50 ng/L)は、水道水についての基準です。製品に含まれる量の基準ではないため、部品や成形品の含有判定には使えません。自社が水道事業者でなく、工場排水の規制も受けていないのであれば、この改正から直接の義務は生じません。製品側で見るべきは化審法の第一種特定化学物質の指定と、輸出先の規制です。

仕入先が「PFASは分からない」と回答してきました。次は何をしますか

まず、分からないのが「調べていない」のか「上流から回答が来ない」のかを切り分けてください。前者なら期限を切り直して再依頼します。後者の場合、その仕入先を責めても進みません。代替として、対象を絞った不使用証明書を取る、疑わしい一点だけ分析にかける(製品中のPFOS/PFOAで2.5〜3.8万円)、代替部品を検討する、の三つがあります。どれも取れない場合は、回答が得られていない事実と、それまでに実施した照会の記録を残したうえで、納入先に状況を開示するのが最も安全です。

  • PFAS
  • 製品含有
  • 2026年
  • EU
  • 化審法
  • TSCA