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はじめてのCiP管理

管理対象物質リストはどこを見ればいいのか

約8,000物質のリストを最初から読む人はいません。自社に関係する行だけを取り出す方法があります。

chemSHERPAで申告する物質は、担当者が自由に選ぶものではありません。「管理対象物質リスト」という一覧が決まっていて、そこに載っている物質だけを申告します。逆に言えば、このリストに載っていない物質は、自社製品に入っていてもchemSHERPAでは申告しません。

リストはCMPコンソーシアムが配布しています。ツールに同梱される形と、Excelファイル単体の形の両方があります。収載数は約8,000物質。ここで多くの担当者が固まります。8,000行のExcelを開いて、どこから手を付ければいいのか分からないからです。

結論を先に書くと、全部は見ません。リストには「なぜこの物質が載っているか」を示すグループ番号が付いていて、そのグループを絞り込むだけで、自社に関係する行は数百に減ります。

リストは10個のグループでできている

物質には、どの法規制または業界要求を根拠に収載されたかを示す番号が付いています。LRで始まる番号が法規制、ICで始まる番号が業界からの要求です。

番号根拠性格
LR01〜LR04法規制(個別の対応法規はリスト本体の凡例シートで確認)法規制グループ
LR05POPs規則(EU)残留性有機汚染物質。原則禁止に近い扱い
LR06REACH規則 SVHC候補リスト0.1重量%超で情報伝達義務
LR07REACH規則 Annex XVII(制限)用途・濃度を限った制限
LR08医療機器規則(EU MDR)医療機器に供給する場合に効いてくる
IC01GADSL自動車業界の申告対象物質リスト
IC02IEC 62474電気電子業界の申告対象物質リスト
管理対象物質リストのグループ構成(Ver.2.13.00 の改訂対象から確認できるもの)

未確認

LR01からLR04が具体的にどの法規制に対応するかは、本稿では一次情報で確認できていません。配布されるリストの凡例シートに対応法規名が書かれているので、そこを見てください。番号の割り当ては改訂で変わることがあります。

このうちIC01のGADSLとIC02のIEC 62474は法規制ではありません。業界団体が「申告してほしい」としている物質です。法律違反にはなりませんが、取引先の受入基準には入ります。

自社に関係する行をどう絞るか

順番があります。

まず仕向地です。EUに出ていく製品がないなら、LR05からLR08の重みは下がります。ただし「自社は国内取引だけ」であっても、納入先がEU向け製品に組み込めばそこまで届きます。納入先の仕向地まで確認してください。対象範囲の決め方は自社は何を管理すればいいのかに書きました。

次に業界です。自動車部品を納めているならIC01のGADSLが効きます。電気電子ならIC02のIEC 62474です。両方に納めている会社は両方見ます。ここで「うちは金属加工だけだから関係ない」と考えるのは早い。めっき、表面処理、潤滑剤、接着剤といった副資材に規制物質が入ります。

最後に材質です。自社が扱う材料の種類で、実際に当たる物質はかなり決まります。はんだなら鉛、めっきなら六価クロムとカドミウム、樹脂なら難燃剤とフタル酸エステル、ゴムなら可塑剤と加硫促進剤、といった具合です。

この3段階で絞ると、日常的に見る行は数十から数百になります。そこまで絞れたら、その範囲を自社の物質チェックリストとして別シートに切り出しておくと毎回の作業が速くなります。

CAS RNでの引き方と、引けないとき

仕入先から届くSDSや成分表には、たいていCAS RN(化学物質の登録番号)が書かれています。リストをCAS RNで検索すれば、その物質が申告対象かどうかが分かります。これが基本の使い方です。

ただしCAS RNで引けない場合があります。

ひとつは、リスト側が物質群として指定している場合です。「鉛及びその化合物」のような書き方だと、個別の化合物のCAS RNがリストに載っていないことがあります。この場合は物質名や元素名でも検索してください。

もうひとつは、仕入先から届いた情報にCAS RNがない場合です。商品名しか書かれていない、あるいは「企業秘密」で伏せられている。この場合は仕入先に問い合わせるしかありません。問い合わせても返ってこないときの段取りは返ってこない調査依頼の督促テンプレート3段階にまとめています。

なお、CAS RNの表記は区切り位置が違うだけで一致しなくなります。7439-92-1 と 7439921 は同じ物質ですが、Excelの検索では別物です。ハイフンを外した形でも一度検索してみてください。

Ver.2.13.00 で何が変わったか

現行は Ver.2.13.00 です。正式版とツールの公開は2026年4月10日頃でした。改訂されたのは次の6項目です。

  • LR05(POPs規則)
  • LR06(REACH SVHC。第34次と第35次の追加を反映)
  • LR07(Annex XVII)
  • LR08(医療機器規則)
  • IC01(GADSL)
  • IC02(IEC 62474)

EU側の根拠は規則 (EU) 2025/1930、2025/1731、2025/1988 です。LR06に入った SVHC は、2025年11月5日の第34次(DBDPEとn-Hexane)と、2026年2月4日の第35次(Bisphenol AF及びその塩)です。候補リストの総数は2026年9月時点で253エントリーです。追加された物質が自社品目に効くかどうかの調べ方はSVHCが追加された時の影響調査を1日で終える手順に分けて書いています。

2026年秋から収載の考え方が変わる

2026年6月23日、CMPコンソーシアムから収載方針の変更が告知されました。CAS RNのある一般化学物質についても収載する、という方向です。2026年秋の定期改訂から実施されるとされています。

これまでのリストは「法規制または業界要求を根拠に載せる」という作りでした。そこに一般化学物質が加わると、収載数は増えます。増えた分だけ、仕入先から集める情報の粒度も上がります。

未確認

2026年秋の改訂で実際に何物質が追加されるか、既存の申告データに再作成が必要になるかは、2026年9月20日時点で公表されていません。改訂版が出たら、まず自社の主要品目で試しに読み込んで、警告が出るかどうかを見るのが確実です。

版が違うと取込みでエラーになる

現場で頻発するのがこれです。仕入先から届いた .shai ファイルが開かない、あるいは自社のツールに取り込めない。原因の多くは版のずれです。

ずれている箇所起きること対処
ツールの版が古い新しい版で作られたファイルが読めないツールを V2R1.03.0 に更新する
物質リストの版が古い新しく追加された物質が未定義として弾かれるVer.2.13.00 のリストを適用する
仕入先のリストが古い最新のSVHCが申告されずに届く版数を指定して再提出を依頼する
取引先の受入側が古いこちらの最新ファイルが受け付けられない取引先に版数を確認して合わせる
版ずれで起きること

ツールの現行版は chemSHERPA V2R1.03.0 です。日本語版と中国語版が2026年4月24日、英語版のrev.1が2026年5月1日に公開されました。旧版からの切換え要請が出ています。明確な使用期限は公表されていません。

エラー画面が出たときの切り分けはツールが起動しない・エラーで怒られる時に、ファイルが開けないときの手順は.shai / .shci ファイルが開けない時の完全手順にまとめています。

版数は記録に残す

判断の記録には、必ず物質リストの版数を書いてください。「Ver.2.13.00 に照らして該当なし」と書いてあれば、次に版が上がったときに差分だけ見れば済みます。版数のない記録は、改訂のたびに一から調べ直すことになります。

不使用証明書を出すときも同じです。根拠にしたリストの版数を書面に入れておくと、後から「いつ時点の判断か」が分かります。書き方は不使用証明書と非含有証明書の違い、そして書き方に置きました。

管理対象物質リストはどこからダウンロードできますか

CMPコンソーシアムのサイトから無償で入手できます。データ作成支援ツールをダウンロードすると同梱されている形と、リスト単体のExcelファイルの形があります。会員でなくても取得できます。アカウント登録が必要な配布物もあるので、サイト上の案内に従ってください。

リストに載っていない物質は申告しなくていいのですか

chemSHERPAの申告としては不要です。ただし取引先のグリーン調達基準で独自に禁止している物質があれば、そちらは別に対応が要ります。chemSHERPAの管理対象物質リストと取引先の自主基準は別物です。両者の関係は別記事にまとめています。

約8,000物質を全部調べないといけませんか

調べません。自社が扱う材料と仕向地で絞ると、実際に見る行は大きく減ります。仕入先に投げる調査依頼も、リスト全体ではなく、chemSHERPAの様式そのものを渡すのが普通です。様式に沿って回答してもらえば、対象物質の切り分けは様式側が持っています。

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