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不使用証明書と非含有証明書の違い、そして書き方

検索して出てくるのは各社のサンプルPDFばかりで、何をどう書けばいいかが書かれていません。ここでは中身を埋めます。

取引先から「不使用証明書を出してください」と言われる。検索すると、各社のサンプルPDFが並びます。様式は手に入る。しかし、どの欄に何を書けば通るのかは、どこにも書かれていません。

ここでは、2つの呼び名の違いと、証明書に入れるべき項目、そして記載例そのものを置きます。

2つの言葉は法令用語ではない

先に押さえておくべき点があります。「不使用証明書」も「非含有証明書」も、法令で定義された用語ではありません。取引上の慣行として使われている呼び名です。だから、会社によって意味が微妙に違います。

観察される使い分けは次のようなものです。

呼び名よく使われる文脈含意されがちな内容
不使用証明書製造工程で使っていないことを示す意図的な添加・使用がない、という宣言
非含有証明書製品に入っていないことを示す不純物を含めて閾値未満、という宣言
含有調査回答書含有の有無を問わず回答する含有していれば含有と書く
非含有保証書保証の語が入る。責任が重い違反時の補償まで含意されうる
2つの呼び名の使われ方(法令上の区別ではなく実務上の傾向)

「使っていない」と「入っていない」は違います。意図的に使っていなくても、原材料に不純物として持ち込まれることがあります。めっき液からの持ち込み、リサイクル材由来の混入、共用ラインでのコンタミネーション。不使用は言えても非含有は言えない、という状況は普通にあります。

取引先の様式に「不使用証明書」と書いてあっても、本文を読むと不純物を含めた非含有を求めていることがあります。まず様式の本文を読んでください。呼び名だけで判断しないことです。

「保証」の語には気をつける

「保証書」という題名の様式には、違反が判明した場合の補償条項が付いていることがあります。署名前に、補償の範囲と上限を確認してください。判断がつかない場合は法務または決裁者に上げます。担当者の裁量で署名する書面ではありません。

証明書に入れる9項目

様式が指定されているならそれに従います。指定がない、あるいは自社様式を作る場合に、最低限入れるべきものは次の9項目です。

#項目書かないとどうなるか
1宛先(取引先の正式名称)どの取引への回答か特定できない
2発行日いつ時点の判断か分からない
3対象品番・品名(型式・図番も)対象が広すぎて後から使えない
4対象物質の範囲と根拠リストの版数何を調べたのかが不明になる
5判定基準と閾値(分母も)製品全体か均質材料かで結論が変わる
6判断の根拠(分析/サプライヤー情報/設計情報)監査で根拠を示せない
7有効範囲(適用除外・条件・期間)除外を使っている鉛と矛盾する
8発行者と責任者(会社名・部署・氏名)誰の判断か分からない
9連絡先追加質問が担当者に届かない
不使用証明書・非含有証明書に入れる9項目

このうち抜けやすいのは4、5、7です。物質リストの版数を書いていない証明書は、次の改訂が来た時点で価値を失います。閾値の分母を書いていない証明書は、RoHSの均質材料単位なのか製品全体なのかが読み取れません。適用除外を書いていない証明書は、実際には除外項目の鉛を使っているのに「不含有」と読める文書になります。

記載例

そのまま骨格として使える例を置きます。会社名と品番は差し替えてください。

                                              2026年9月20日

株式会社○○○○
購買部 御中

                                    ××工業株式会社
                                    品質保証部 部長 △△ △△
                                    〒000-0000 ○○県○○市○○1-2-3
                                    TEL 000-000-0000
                                    E-mail cip@example.co.jp


              製品含有化学物質 不使用証明書


 下記対象製品について、弊社は以下のとおり回答いたします。

1. 対象製品
   品名   ブラケット
   品番   ABC-1234-05
   図番   D-1234 Rev.C
   (上記品番の全ロットを対象とする)

2. 対象物質の範囲
   chemSHERPA 管理対象物質リスト Ver.2.13.00 に収載された物質
   (EU RoHS指令 2011/65/EU 制限10物質、
     REACH規則 SVHC候補リスト 253エントリー(2026年2月4日 第35次追加時点)を含む)

3. 判定基準
   RoHS制限物質  カドミウム 0.01重量%以下、その他9物質 0.1重量%以下
                 いずれも均質材料単位で判定
   SVHC          成形品中 0.1重量%以下

4. 判定結果
   上記2の対象物質について、3の基準を超える含有はありません。
   ただし下記5の適用除外を除きます。

5. 適用除外の使用
   EU RoHS指令 附属書III 除外項目 6(c)
   (機械加工性のための銅合金中の鉛、4重量%まで)を使用しています。
   当該除外の期限は 2027年6月30日 です(委任指令 (EU) 2025/2364)。

6. 判断の根拠
   ・材料メーカーからのミルシート(2026年5月12日付)
   ・一次仕入先からの chemSHERPA-AI データ(2026年6月3日受領、
     管理対象物質リスト Ver.2.13.00 適用)
   ・弊社設計部門による構成材料の確認(2026年6月10日)
   ・分析は実施していません

7. 有効範囲
   本証明書は上記1の品番、かつ上記2の物質リスト版数に対する回答です。
   材料・工程・購入先の変更があった場合、および対象物質リストが
   改訂された場合は、あらためて回答いたします。

8. 問い合わせ先
   ××工業株式会社 品質保証部 □□ □□
   TEL 000-000-0000(内線 000) E-mail cip@example.co.jp

                                                        以上

分析結果を根拠にする場合は、6を次のように書き換えます。

6. 判断の根拠
   ・第三者分析機関による分析(○○分析センター、
     報告書番号 R-2026-0512、測定日 2026年5月12日)
     分析方法:IEC 62321 シリーズ準拠
     結果:鉛 ND(検出限界 5 ppm)、カドミウム ND(検出限界 2 ppm)、
           水銀 ND(検出限界 5 ppm)、六価クロム ND(検出限界 5 ppm)
   ・分析は対象品番の代表1検体について実施

検出限界以下を「ND」と書くか「0」と書くかは論点があります。検出限界の値を併記するのが安全です。理由は検出限界以下なら「0」と書いていいのかに分けて書きました。

よくある不備

差し戻される証明書には共通した型があります。

不備なぜ問題か直し方
「全製品について不含有」対象が特定できず、後から追加された品番にも効いてしまう品番を列挙するか、対象範囲を明記する
物質リストの版数がないいつ時点の判断か不明Ver.2.13.00 のように版数を書く
「RoHS、REACH対応済」だけ物質も閾値も分母も書かれていない物質範囲と閾値を明記する
閾値の分母が製品全体RoHSは均質材料単位「均質材料単位で判定」と書く
適用除外の記載がない除外を使っているのに不含有と読める除外項目番号と期限を書く
根拠が「弊社調査による」だけ監査で追跡できない分析/仕入先情報/設計情報のどれかを明記する
発行者が担当者個人名のみ会社としての判断か分からない部署と責任者名を入れる
発行日が空欄有効性を判断できない発行日を必ず入れる
差し戻しにつながる不備

最も多いのは1行目です。「弊社の全製品は環境規制物質を含有しておりません」という一文だけの書面が、いまも流通しています。これは何も証明していません。受け取る側が監査で示しても通りません。

対象範囲の書き方で後が決まる

9項目のうち、3の対象品番と7の有効範囲は、書き方によって後の負担が大きく変わります。

品番を1つに絞って書けば、その品番についてだけ責任を負います。安全ですが、品番が増えるたびに発行が必要になります。品番を広く取れば発行回数は減りますが、後から追加された品番にまで効いてしまいます。設計変更があったのに古い証明書が生きている、という状態は避けたい。

実務的な落としどころは、品番を列挙したうえで、有効範囲の欄に再発行の条件を書くことです。材料の変更、工程の変更、購入先の変更、対象物質リストの改訂。この4つのいずれかが起きたら再発行する、と書いておけば、範囲を広めに取っても破綻しません。

ロットの扱いも決めておきます。「上記品番の全ロットを対象とする」と書くか、「ロット番号○○以降を対象とする」と書くか。工程や材料を切り替えた直後なら、切替後のロットに限定するほうが正確です。切替前の在庫が取引先に残っている場合、証明書の内容と実物が食い違います。

受け取る側として証明書を読むとき

自社が仕入先から証明書を受け取る立場になることもあります。そのとき見るべき点は、出す側で気をつける点とほぼ同じです。

版数が書かれているか。閾値の分母が書かれているか。根拠が「弊社調査による」だけになっていないか。発行日が古すぎないか。この4点が満たされていない証明書は、自社が監査を受けたときに根拠として示せません。

受け取った証明書に不備がある場合、そのまま保管しても意味がありません。届いた時点で不足項目を指摘し、再発行を求めてください。数年後に監査で指摘されてから遡って集め直すのは、はるかに大きな負担になります。

署名する前に確認すること

証明書は会社としての意思表示です。出した後で覆すのは難しい。署名の前に3つ確認してください。

ひとつ、根拠が手元にあるか。仕入先からの回答が口頭やメール本文だけなら、書面またはデータで取り直します。監査で出せるのは記録に残っているものだけです。

ふたつ、判断の責任範囲が自社で完結しているか。「仕入先がそう言ったから」は根拠になりますが、判断そのものは自社の責任です。自社が出荷する製品についての遵法判断は自社が負います。詳しくは遵法判断は誰がするのか、という最大の誤解に。

みっつ、記録の残し方が決まっているか。発行した証明書と、その根拠になった資料を、同じ場所に版数付きで残します。担当者のPCだけに置かないことです。台帳の作り方は無料でできる範囲の管理台帳の作り方にまとめました。

chemSHERPAがあるなら証明書は要るのか

取引先がchemSHERPAを受け入れるなら、多くの場合はそちらで足ります。chemSHERPAには成分情報と遵法判断情報が構造化して入っており、証明書より情報量が多いからです。

それでも証明書が求められる場面があります。取引先がchemSHERPAを扱える体制にない場合、監査用に紙の記録が要る場合、官公庁や建設案件の提出書類として様式が指定されている場合です。この場合は、chemSHERPAのデータをそのまま根拠にして証明書を書けます。上記の記載例の6に、chemSHERPAデータの受領日と適用リスト版数を書けば足ります。

対象物質リストの版数の扱いは管理対象物質リストはどこを見ればいいのかに、RoHSとSVHCで閾値の分母が違う理由はRoHSとREACHとSVHC、関係を1枚で理解するに置いています。

不使用証明書と非含有証明書はどちらを出せばいいですか

取引先の様式に書かれた名称に合わせるのが基本です。どちらも法令用語ではないため、名称よりも本文で何を宣言しているかが重要になります。様式の指定がない場合は、意図的添加のみを否定するのか、不純物を含めて閾値未満を宣言するのかを本文で明確にしてください。

分析をしていなくても証明書を出していいですか

出せます。根拠として分析、仕入先からの情報、設計情報のいずれを使ったかを書面に明記すれば問題ありません。むしろ分析していないのに分析したかのように書くほうが重大です。根拠の欄に「分析は実施していません」と書いた証明書は、不誠実ではなく正確な文書です。

証明書に有効期限は書くべきですか

日付での期限より、条件で書くほうが実務に合います。材料・工程・購入先の変更があった場合と、対象物質リストが改訂された場合に再発行する、という書き方です。SVHC候補リストは2025年11月と2026年2月に追加があり、定期更新のリズムも崩れています。日付で切ると更新漏れが起きます。

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