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chemSHERPA実務

差戻し理由TOP10と、その直し方

また差し戻された、という状態には原因があります。多くは自分の不注意ではなく、様式と版数が動く構造から来ています。

提出したchemSHERPAが返ってくる。理由欄には「記載内容をご確認ください」とだけ書いてある。どこを直せばいいのか分からないまま、また資料を集め直し、また仕入先に頭を下げ、納期に追われる。

この繰り返しがつらいのは、作業量よりも、次も同じことが起きると分かっているからです。実際、同じ担当者が何度も差し戻されます。腕の問題ではありません。取引先ごとに様式が違い、管理対象物質リストの版が年に何度も動き、適用除外の期限が更新される。動くものに手作業で追随している以上、一定の確率で外れます。

だから対処は2段構えになります。いま返ってきた1件を直すことと、同じ型で返ってこないように運用を変えること。以下の10の型は、どちらの目的でも使えるように並べました。

順位について

以下の並びは、実務で遭遇しやすい順に並べたものであり、統計に基づく順位ではありません。公表された差戻し理由の統計は、2026年9月時点で確認できていません。自社で3回分の差戻し理由を記録すると、自社版の順位が出ます。そちらのほうが役に立ちます。

10の型

#何が起きているかどこを直すか次から防ぐ方法
1対象品番が特定できない依頼された品番と、ファイルに書かれた品番が一致しない。枝番違い、図番欠落、旧品番のまま基本情報の品番・型式・図番欄。依頼メールの文字列をコピーして貼る依頼メールから品番をコピーする運用にする。手打ちをやめる
2質量・重量の不一致製品質量と、下位構成の質量合計が合わない。四捨五入の残り、部品の入れ忘れ構成表の各階層。下から足し上げて上位質量と突き合わせる部品表から転記する前に、部品表側で合計を検算しておく
3必須項目の空欄発行者情報、発行日、用途、含有部位などが未入力。ツールの警告を無視して保存しているツールのチェック機能を実行し、警告一覧を全件つぶす保存前にチェック機能を必ず走らせる。警告を残したまま送らない
4管理対象物質リストの版数不一致自社が古い版で作成し、取引先が新しい版で取り込もうとしている。またはその逆ツールが参照しているリストの版を確認し、指定版で作り直す依頼時に版数を確認する。ツールの更新有無を月次で見る
5単位違いmgとg、%とppmの取り違え。桁が3つまたは4つずれる質量欄と含有率欄。単位のプルダウンと数値をセットで見る社内の図面単位と依頼元指定単位の対応表を1枚作る
6成分の合計が合わない構成比の合計が100%にならない。99.7%や100.2%で止まっている各階層の構成比。丸め桁を揃え、残差をどこに寄せるか決める入力後に合計セルで検算する。丸めは最後に1回だけ行う
7遵法判断情報が空成分情報だけ作って提出した。依頼元は遵法判断情報まで求めていた遵法判断情報のタブを開き、対象法規制ごとに入力する依頼受領時に要否を確認する。初日の確認5項目に含める
8適用除外コードの根拠がない除外番号は入っているが、その用途に対応しているか確認できない。期限切れの除外を使っている除外番号と、自社製品の用途・材質の対応を照合する。根拠資料を添える使っている除外番号の一覧と期限を台帳に持つ
9発行者情報の不備旧社名、旧部署、退職者名、つながらない電話番号が残っている発行者情報欄。テンプレートの初期値を疑う組織変更のたびにテンプレートを更新する担当を決める
10依頼元の独自様式との不一致chemSHERPAは正しいが、取引先独自のExcelや不使用証明書が同封されていない依頼メールを最後まで読み直し、要求物の一覧を作る取引先ごとの提出物セットを台帳に記録する
差戻しの型と対処

型ごとの補足

1は、似た品番が並ぶ会社で頻発します。末尾の「-01」「-1」「_1」の違いが読み分けられていない。人間の目は、見慣れた品番ほど飛ばして読みます。コピー&ペーストに切り替えるだけで消えます。

2と6は連動します。片方を直すともう片方がずれることがあるので、直したら両方を再検算してください。特に、構成比を0.1%刻みで入力して100%に揃えた後、質量を再入力すると合計が崩れます。

4の版数は、こちらの怠慢とは限りません。管理対象物質リストは2026年4月にVer.2.13.00へ改訂されました(CMPコンソーシアム)。改訂内容はLR05 POPs規則、LR06 REACH SVHC(第34次・第35次)、LR07 Annex XVII、LR08 医療機器規則、IC01 GADSL、IC02 IEC 62474の6項目です。年に複数回動くものに、取引先と自社が別々のタイミングで追随している。ずれるのが自然な構造です。読み方は管理対象物質リストはどこを見ればいいのかにあります。

5の単位は、社内図面がmg、依頼元指定がgというような食い違いから生まれます。換算を作業の途中で行うと、換算済みかどうかが分からなくなる。転記の最初に1回だけ換算し、換算した旨を作業メモに残してください。

7は、初日の条件確認で防げます。依頼メールに「成分情報のみ」「遵法判断情報も必要」と明記されていないことがよくある。確認の仕方は取引先からchemSHERPAを求められた初日にやることに置いています。

8は、2026年から2027年にかけて増える見込みの型です。2025年に公布されたRoHS適用除外の委任指令3件により、鋼・アルミ・銅合金中の鉛が2027年6月30日、高融点はんだ中の鉛とガラス/セラミック部品中の鉛が2027年末に期限を迎えます。いま有効な除外が、出荷時点でも有効とは限らない。期限の一覧はRoHS適用除外項目の期限が2027年に集中しているにまとめました。

なお、chemSHERPAのツール側では2026年9月8日にEU RoHS適用除外コードの自動変換機能が実装されています(CMPコンソーシアム)。変換されたコードをそのまま信じるのではなく、自社の用途に合っているかは人が見てください。

10は、事務的でありながら再提出率の高い型です。要求物が依頼メールの本文末尾や添付の注意書きに小さく書かれていることが多い。取引先ごとに要求が違う理由はグリーン調達基準とは何で、なぜ会社ごとに違うのかで扱っています。

差し戻されたときの連絡の仕方

理由欄が一行しかない場合、推測で直すと2往復目が来ます。先に聞いてください。聞く内容は4つです。

ひとつめ、どの欄が不適合と判定されたか。可能であれば、取引先側のシステムが出力したエラーメッセージそのものを送ってもらいます。「記載内容の不備」では動けません。

ふたつめ、取引先が使用している管理対象物質リストのバージョン。ここが違うだけで取込みが通らないケースがあります。

みっつめ、期待されている様式。chemSHERPA-AIかCIか、独自様式の併用があるか、遵法判断情報の要否。最初の依頼で曖昧だった条件を、このタイミングで確定させます。

よっつめ、再提出の期限。差戻しの時点で、当初の期限は過ぎているか直前のことが多い。いつまでに出せば受入検査に間に合うのかを聞きます。

文面の例です。

差戻しのご連絡ありがとうございます。速やかに修正のうえ再提出いたしますので、下記をご教示いただけますでしょうか。

  1. 不適合と判定された項目(取込み時のエラーメッセージがあれば、そのままお送りください)
  2. 貴社でご使用の管理対象物質リストのバージョン
  3. chemSHERPA以外に必要な提出物の有無(独自様式・不使用証明書など)
  4. 再提出の期限

なお、二次サプライヤーへの再照会が必要な項目が含まれる場合、回答に2週間程度を要する見込みです。その場合は改めてご相談させてください。

最後の一文を入れておくと、再照会が必要になったときの交渉が楽になります。差戻しの連絡と同時に伝えるのが一番通ります。

謝罪から入りたくなりますが、長い謝罪より、聞くべきことを聞いて早く直すほうが心証はよい。相手も次の工程を待たせています。

同じ型で3回返ってきたら、運用を疑う

同じ型の差戻しが3回続く場合、担当者の注意力の問題ではありません。仕組みのどこかが噛み合っていない。

version の管理が原因なら、ツールとリストの更新確認を月次の作業に入れる。転記が原因なら、部品表からの転記経路を1本にする。取引先ごとの要求が原因なら、台帳に取引先別の提出物セットを持つ。台帳の作り方は無料でできる範囲の管理台帳の作り方に置きました。月10件以下であれば、システムを買う前にできることが残っています(月10件以下ならシステムは要らない)。

仕入先からの回答が遅くて期限に追われる、という形で差戻しが連鎖している場合は、督促の出し方を変えるほうが効きます。文面は返ってこない調査依頼の督促テンプレート3段階に3段階で用意しています。

提出前に止めるほうが安い

差戻し1件の復旧には、原因特定に半日、仕入先への再照会が入れば1週間から2週間かかります。提出前のチェックは10分です。

上の10の型は、そのままチェック項目に置き換えられます。20項目版を提出前チェックリスト20項目に用意しました。印刷して使える1枚版は配布資料に置いています。

差戻しをゼロにはできません。取引先の要求は動くし、物質リストも動く。目標は、同じ型で2回返ってこないようにすることです。1回目は情報として受け取り、2回目からは運用で潰す。

未確認

差戻し理由の公表統計は、2026年9月時点で確認できていません。上の順位は実務上の遭遇しやすさによる並びです。また、旧版ツールの明確な使用期限も公表されていません。最新版はV2R1.03.0(日本語版・中国語版2026年4月24日公開)です。

差戻しの理由が「フォーマットエラー」としか書かれていません

取込み側のシステムが出したメッセージである可能性が高いので、原文をそのまま送ってもらってください。多いのは管理対象物質リストの版数不一致と、構成比の合計が100%にならない2つです。手元でツールのチェック機能を走らせて警告が出ないなら、版数を疑う順番になります。ツール自体が動かない場合はツールが起動しない・エラーで怒られる時を見てください。

仕入先から来たデータをそのまま転送したら差し戻されました

自社名義で出すべきところを、仕入先名義のまま転送している可能性があります。商社や組立だけを担う立場でも、自社が提出者になる場合は発行者情報を自社に書き換え、自社として遵法判断を行う必要があります。誰が判断するのかについては遵法判断は誰がするのか、という最大の誤解にあります。転送してよいかどうかは、依頼元に一度確認してください。

何度も差し戻されて、取引に影響しないか心配です

差戻し自体は日常的に発生しているもので、1回や2回で取引が止まることは通常ありません。心証に効くのは回数よりも、連絡が途絶えることと、期限を過ぎてから初めて報告することです。直せる見込みと日付を先に伝えるほうが、完璧な修正を黙って待たせるより評価されます。再照会が必要なら、その旨も同時に伝えてください。

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