「chemSHERPAを作る時間がない」「1件だけのために担当を育てる余裕がない」。この状態で代行を検索すると、価格が書かれていないサイトが並びます。問い合わせないと分からない。問い合わせると営業が付く。だから調べる手前で止まる。
ここでは、2026年9月時点で価格を公開している事業者の実額を並べます。そのうえで、料金に含まれる作業と含まれない作業の境目を示します。境目を知らずに発注すると、「頼んだのに自分でやることが減らなかった」という結果になります。
公開されている価格
| 事業者 | 価格 | 納期 | 特記 |
|---|---|---|---|
| エコハーツ | 4,000円(税抜)〜/件 | 約2週間 | 無料トライアルあり |
| オーバル「chemクライマー」 | 5,000円(税抜)〜/1成果物 | 標準5営業日 | AIによる作成サービスを提供 |
| ユービーサポート | 見積無料(金額は個別見積) | 個別 | IMDSとchemSHERPAの一括代行に対応 |
3社とも「〜」が付いています。構成が単純な単一部品の下限値であり、多階層の組立品や、成分情報が揃っていない品目では上がります。下限だけで予算を組むと足が出ます。
エコハーツの無料トライアルは、発注前に品質と往復の手間を見るのに使えます。1件試してから残りを出す進め方が、初めての外注では安全です。
ユービーサポートはIMDSとchemSHERPAの両方を扱います。自動車向けと電機向けの両方に納めている会社では、窓口を1つにできる利点があります。
未確認
上記3社以外にも作成代行を提供する事業者は存在しますが、価格を公開していない場合が多く、実額は確認できていません。確認できていない金額をこの記事には書きません。事業者の一覧はCMPコンソーシアムのサービス事業者リンク集で見られます。また、上記各社の価格・納期は2026年9月時点で各社サイトに掲載されていた内容であり、改定される可能性があります。発注前に必ず直接ご確認ください。
掲載料は受け取っていません
この記事に載せた事業者から、掲載料や紹介料は受け取っていません。価格を公開しているという理由だけで載せています。順序は価格順で、推奨の順ではありません。方針は編集方針に書いています。
料金に含まれるもの、含まれないもの
ここが発注前に最も誤解される部分です。一般に、代行が引き受けるのは「揃った情報を正しい様式に落とす」作業です。情報を揃える作業は、原則として自社に残ります。
| 作業 | 誰がやるのが一般的か | 補足 |
|---|---|---|
| 対象品番の特定、構成表(部品表)の用意 | 自社 | 図面と部品表は自社にしかない |
| 仕入先への調査依頼の発送 | 自社が多い。代行が代行する場合もある | 代行名義で依頼すると仕入先が警戒することがある |
| 返信しない仕入先への督促 | 自社が多い | 取引関係がないと督促の効きが弱い |
| 受け取った成分データの読み取り・転記 | 代行 | ここが料金の本体 |
| ツールへの入力、構成の組み立て | 代行 | 階層が深いほど工数が増え、加算されやすい |
| 均質材料の切り分けの判断 | 代行が案を出し、自社が確認 | 材質や工程を知らないと切れない |
| 遵法判断情報の入力 | 代行が入力、判断は自社 | 入力代行と判断は別のもの |
| 最終的な遵法判断の責任 | 自社 | 外注できない |
| 分析が必要な場合の試験費用 | 自社(別費用) | 代行料金には通常含まれない |
| 取引先からの差戻し対応 | 契約次第 | 回数制限の有無を必ず確認する |
重要なのは下から4行目です。遵法判断情報の入力欄を代行が埋めることはできますが、その内容に責任を負うのは提出者である自社です。外部に出したから責任も移る、という理解は成り立ちません。この点は遵法判断は誰がするのか、という最大の誤解に詳しく書きました。
分析費用も別立てです。成分が分からない部品について、仕入先から回答が得られず分析に出す場合、RoHS 10物質で41,000円から46,000円、SVHC全項目で19.5万円から24万円が2026年の実勢です(三晃技研工業、JTCの公開価格)。代行料金の数千円とは桁が違うので、分析が必要かどうかを先に切り分けてください。相場の内訳は分析費用の相場(RoHS・SVHC・PFAS/2026年実勢)にあります。
自社作成と外注の分かれ目
判断材料は件数、構成の深さ、継続性の3つです。
件数が少なく、単発なら外注が有利です。1件4,000円から5,000円で、自社の担当者が半日から2日かけて習熟する必要がなくなる。時給換算すれば比較になりません。
件数が多く、継続するなら自社作成が有利になります。同じ製品群であれば、2件目以降の作業時間は大きく落ちます。品目マスタと過去の回答が蓄積されるためです。件数が月10件を超えるあたりから、外注費の合計が担当者の工数を上回り始めます。
構成が深い場合は、どちらでも苦しい。律速になるのは仕入先からの回答待ちで、これは外注しても短くなりません。二次、三次サプライヤーへの照会は自社の取引関係でしか進まない。回収に2週間から4週間かかるのが通常です。
外注が効くのは「様式作業」だけ
代行に出して楽になるのは、ツールの操作、構成の組み立て、転記の正確性です。逆に、楽にならないのは仕入先からの回答回収と、社内での最終判断です。この2つが全体工数の大半を占める案件では、外注しても体感の負担が減りません。外注の前に、自社の工数がどちらに偏っているかを見てください。
見積もりを取るときに伝える5項目
見積依頼が曖昧だと、返ってくる金額も曖昧になります。次の5つを最初のメールに書いてください。1往復で見積が出ます。
ひとつめ、対象品番の件数と、うち初回か更新かの内訳。更新は安くなることがあります。
ふたつめ、chemSHERPA-AIかCIか。成形品か化学品かで工数が変わります。判定に迷う場合はchemSHERPA-AI と CI、どちらを出すのか3問で判定を見てください。
みっつめ、構成の階層数と、1品番あたりの部品点数の目安。「単一部品」「10点程度の組立品」「50点超」で価格帯が変わります。
よっつめ、成分情報の入手状況。仕入先からのchemSHERPAが手元にあるのか、SDSしかないのか、何もないのか。これが最も金額に効きます。SDSしかない場合の扱いはSDSとchemSHERPAは何が違うのかにあります。
いつつめ、遵法判断情報の要否と、依頼元が指定した管理対象物質リストのバージョン。2026年9月時点の最新はVer.2.13.00です(CMPコンソーシアム、2026年4月公開)。取引先が別の版を指定している場合は、その版を伝えてください。
あわせて、差戻しが発生した場合の対応が料金に含まれるか、回数制限があるかを聞いておきます。ここを確認せずに発注すると、差戻しのたびに追加費用が乗ります。差戻しの型は差戻し理由TOP10と、その直し方に並べました。
発注しても自社に残る作業
発注後に「思ったより楽にならなかった」となる原因は、この4つを見落としていることです。
対象品番の確定と、依頼元の条件確認。これは代行には見えません。依頼メールを読んで条件を詰めるのは自社です。手順は取引先からchemSHERPAを求められた初日にやることにあります。
仕入先への照会と督促。代行名義で出すと、仕入先が「取引のない会社から問い合わせが来た」と受け取り、かえって遅くなることがあります。督促の文面は返ってこない調査依頼の督促テンプレート3段階に用意しています。
出来上がったデータの確認。代行は与えられた情報の範囲でしか作れません。材質や工程の知識は自社にあります。受領時のチェックは提出前チェックリスト20項目がそのまま使えます。
提出後の保管と、法改正時の見直し。SVHC候補リストは2026年2月4日の第35次で253エントリーになりました(ECHA)。追加のたびに、過去に提出したデータを見直すのは自社の仕事です。
買わなくていい場合
次に当てはまるなら、外注しなくても通ります。
対象が1品番か2品番で、単一材料の部品であること。この場合、ツールの導入と入力で半日程度です。
仕入先からのchemSHERPAがすでに手元に揃っていること。転記するだけなら、代行に渡す手間とほとんど変わりません。
社内に過去の提出実績があること。前回のファイルを流用できるなら、ゼロから作るより速い。
逆に、初回で、多階層で、期限が2週間を切っていて、社内に経験者がいない。この組み合わせなら外注を検討する価値があります。ただし納期が5営業日から2週間かかるため、期限直前の発注では間に合いません。判断は早いほうがいい。
AI作成サービスについて
オーバルの「chemクライマー」はAIによる作成サービスを提供しています(同社サイト)。入力の自動化が進めば単価は下がる方向ですが、成分情報の入手と遵法判断という律速部分が自動化されるわけではありません。精度や適用範囲の第三者評価は、2026年9月時点で確認できていません。トライアルがある場合は、自社の代表的な品目1件で試してから判断してください。
いちばん安いところに頼んで問題ありませんか
価格だけで選ぶと、差戻し対応が別料金で、結局高くつくことがあります。見積時に、差戻し対応の有無と回数、成分情報が不足していた場合の追加料金、納期遅延時の扱いの3点を確認してください。公開価格は下限値であることが多いので、自社の品目で実際に見積を取って比較するのが確実です。
代行に出せば、法令違反になったときの責任も移りますか
移りません。製品をEU市場等に供給する事業者として、含有情報の伝達義務や適合の責任は提出者側に残ります。代行が行うのは、提供された情報に基づく様式への入力です。契約書にも通常この趣旨が書かれています。自社の範囲については遵法判断は誰がするのか、という最大の誤解を見てください。
仕入先がchemSHERPAを出してくれません。代行が集めてくれますか
事業者によりますが、標準サービスに含まれないことが多く、含まれる場合もオプション料金になります。また、取引関係のない第三者からの照会は返信率が下がる傾向があります。自社名義で出し、回答がない場合の督促を段階的に行うほうが実効性があります。どうしても出てこない場合の代替手段としては、不使用証明書での対応や分析があります(不使用証明書と非含有証明書の違い、そして書き方)。