このページは候補リストに追加があるたびに更新します。追加の直後は「何が増えたのか」より「自社に関係があるのか」を早く知りたいはずなので、数字と対応状況を先に置きます。
現在の数字
2026年9月20日時点で、REACH規則のSVHC候補リストは253エントリーです。この253という数字は、直近2回の追加を経たあとの数です。
| 回 | 公表日 | 追加された内容 | 追加後のエントリー数 |
|---|---|---|---|
| 第34次 | 2025年11月5日 | DBDPE(1,1′-(ethane-1,2-diyl)bis[pentabromobenzene])、n-Hexane | 251(計算値・未確認) |
| 第35次 | 2026年2月4日 | Bisphenol AF及びその塩(2物質群) | 253 |
| 第36次 | 未公表 | — | — |
第34次の直後の総数251は、第35次の253から逆算した数であり、一次情報で確認したものではありません。数字を社内資料に転記する場合は253だけを使い、251は参考値として扱ってください。
「エントリー数」と「物質数」は違う
253という数はエントリーの数です。収載されている化学物質の数ではありません。
候補リストには、単一の物質として載っているものと、構造や性質が近い複数の物質をひとまとめにした物質群として載っているものがあります。物質群のエントリーは、1エントリーの中に複数の物質を抱えています。第35次で追加されたBisphenol AF及びその塩も、2つの物質群という形での追加でした。
| 数え方 | 何を数えているか | 使う場面 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| エントリー数 | 候補リストの行の数 | ECHAの公表、社内報告 | 物質の総数とは一致しない |
| 物質数 | 実際の化学物質の数 | 分析の見積、物質リストとの突合 | 物質群の展開で大きく増える |
| CAS番号の数 | 番号が振られた物質の数 | 成分表との機械照合 | CAS番号のない物質群は拾えない |
この違いが実務で効くのは、分析を頼むときと、成分表を機械照合するときです。分析ラボの料金表に「SVHC 253物質」「SVHC 254物質」といった表記が並びますが、これはラボが対象としている分析項目の数であり、候補リストのエントリー数とは別の数え方です。見積を比較するときは、数字ではなく対象物質のリストそのものを突き合わせてください。料金の実勢は分析費用の相場(RoHS・SVHC・PFAS/2026年実勢)にまとめています。
追加のタイミングが従来と変わっている
候補リストの更新は、長らく年2回の定期的なリズムで行われてきました。しかし第34次が2025年11月5日、第35次が2026年2月4日と、従来のリズムから外れた時期に公表されています。
このため「次は何月ごろ」という前提で年間計画を組むことができなくなっています。次回の見通しについてはSVHC第36次はいつ来るのかに、予測ではなく準備の観点から書きました。
chemSHERPA側の対応状況
候補リストに追加があっても、chemSHERPAの管理対象物質リストが更新されるまでは、ツール上で新しい物質を選ぶことができません。実務ではこのタイムラグが問題になります。
現在の管理対象物質リストはVer.2.13.00で、正式版とツールの公開は2026年4月10日頃です。この版の改訂内容は6項目あり、そのうちLR06のREACH SVHCが第34次・第35次の追加に対応しています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| LR05 | POPs規則 |
| LR06 | REACH SVHC(第34次・第35次の追加を反映) |
| LR07 | REACH Annex XVII |
| LR08 | 医療機器規則 |
| IC01 | GADSL |
| IC02 | IEC 62474 |
つまり、2026年9月時点でVer.2.13.00を使っていれば、第35次までのSVHCは物質リスト上でカバーされています。自社が使っている版がこれより古い場合、第34次・第35次の物質が選択肢に出てきません。版の確認方法とどこを見るかは管理対象物質リストはどこを見ればいいのかに書きました。
ツール本体はchemSHERPA V2R1.03.0が最新です。日本語版・中国語版が2026年4月24日公開、英語版rev.1が2026年5月1日公開で、旧版からの切換え要請が出ています。明確な使用期限は公表されていません(未確認)。
追加されたときに、最初にやること
新しい物質が候補リストに載った日、いきなり全品目を調べ始めると終わりません。順番があります。
- 追加された物質の代表的な用途を調べ、自社の製品分野と重なるかを見る
- 重なるなら、自社品目のうちその用途に該当しそうな部位を絞る
- 絞った範囲だけ仕入先に照会する
- 絞り込みの過程と、対象外とした理由を記録に残す
4を飛ばす会社が多いのですが、ここが抜けると次の追加のときに同じ作業をやり直すことになります。対象外とした判断そのものが資産です。
具体的な時間配分と照会文面はSVHCが追加された時の影響調査を1日で終える手順にまとめました。1日で終わるかどうかは、追加された日の動き方ではなく、その前に何を持っているかで決まります。
追加をどこで知るか
追加の情報は複数の経路から流れてきますが、速さと正確さが両立しません。速い経路は表記がぶれ、正確な経路は遅れます。両方を使い分けます。
| 経路 | 速さ | 使いどころ | 注意点 |
|---|---|---|---|
| ECHAの候補リストページ | 最速 | 正式名称とCAS番号の確定 | 自動取得を拒否されることがあり、目視での確認になる |
| CMPコンソーシアムの告知 | 数日遅れ | 日本語での確認、chemSHERPA側の対応見込み | 物質リストの更新は告知より後になる |
| 取引先からの一斉連絡 | ばらつく | 取引先が何を求めてくるかの把握 | 相手の解釈が混ざっていることがある |
| 業界団体・ベンダーの記事 | 早いこともある | 用途の当たりをつける参考 | 二次情報。数字は必ず原典で確かめる |
取引先からの連絡で初めて知る、という状態は避けたいところです。相手のほうが先に把握していると、こちらは受け身のまま期限を切られることになります。月1回でも自分で見る習慣があるだけで、立場が変わります。
候補リスト収載は禁止ではない
追加のたびに社内で「使えなくなるのか」という問い合わせが来ます。候補リストへの収載そのものは使用禁止ではありません。第33条の情報伝達義務と、SCIPへの届出の対象になるという意味です。
使用が制限されるのは、その物質がAnnex XIV(認可)またはAnnex XVII(制限)に進んだ場合です。候補リストは、その手前の段階にあたります。両者の違いはREACH規則を実務目線でわかりやすくの表に置きました。
ただし、取引先のグリーン調達基準が候補リスト収載を独自に禁止対象としている場合があります。この場合は法規制ではなく契約上の要求として対応することになります。会社ごとに基準が違う理由はグリーン調達基準とは何で、なぜ会社ごとに違うのかにあります。
更新履歴の残し方
このページのような外部の情報に頼るだけでなく、自社側でも追加の履歴を残しておくことをすすめます。残すのは3列で足ります。公表日、追加された物質、自社の影響調査の結論。
| 列 | 記入する内容 | 記入者 |
|---|---|---|
| 公表日 | ECHAの公表日 | 確認した担当者 |
| 追加内容 | 物質名またはエントリー名 | 同上 |
| 用途の当たり | 自社製品分野との重なりの有無 | 担当者 |
| 調査範囲 | 照会した品目と部位 | 担当者 |
| 結論 | 該当あり・なし・保留 | 判断者 |
| 判断日 | 結論を出した日 | 判断者 |
この表が3回分たまると、4回目からの作業時間がはっきり短くなります。台帳の作り方そのものは無料でできる範囲の管理台帳の作り方を参照してください。
未確認
第34次追加直後のエントリー総数251は計算値で、一次情報での確認は取れていません。また、2026年9月時点で第36次の追加は公表されていません。本ページの数字は2026年9月20日時点のもので、以降の追加は反映されていない可能性があります。
候補リストが253エントリーというのは、253種類の物質という意味ですか
違います。253はエントリー(リストの行)の数です。1つのエントリーが複数の物質を含む物質群であることがあり、実際の物質数はこれより多くなります。分析の見積を取るときや成分表と突き合わせるときは、エントリー数ではなく対象物質のリストそのもので比較してください。
自社が使っているchemSHERPAの物質リストが最新かどうか、どう確かめますか
ツールの管理対象物質リストのバージョン表示を見ます。2026年9月時点の最新はVer.2.13.00で、この版が第34次・第35次のSVHC追加に対応しています。これより古い版を使っている場合、追加された物質が選択肢に出てきません。取引先から差し戻される原因にもなります。
候補リストに載った物質を使っている部品は、設計変更が必要ですか
法規制の観点では、候補リスト収載だけを理由に設計変更が必要になることはありません。求められるのは情報の伝達です。ただし取引先のグリーン調達基準が独自に収載物質を禁止している場合は、契約上の要求として代替が必要になります。まず要求の出どころが法規制か契約かを切り分けてください。