技術文書(Annex VII)に何を綴じるのかに関連するイメージ写真

包装規制

技術文書(Annex VII)に何を綴じるのか

技術文書は書式の問題ではなく、情報を持っている相手(多くは包装サプライヤー)から集める作業です。

技術文書(Annex VII)は、適合宣言書(DoC)の裏付けとなる資料一式です。DoCが1枚の宣言書であるのに対し、技術文書は複数の資料をまとめたファイルになります。作成の難しさは書式にあるのではなく、必要な情報の多くを自社ではなく包装サプライヤーが持っている点にあります。

Annex VIIが求める情報

区分内容情報の主な所在
包装の識別BOM・部品階層・素材別重量・サプライヤ情報・SKU品番自社の設計・購買データ、サプライヤー
最小化の設計根拠過剰包装を避けた設計上の根拠(Art.10)自社の設計・生産技術
リサイクル性評価リサイクル可能性の評価・試験報告・等級(Art.6)サプライヤー、または試験機関
再生材証明再生材の含有証明とバッチ単位のトレース(Art.7、プラのみ)原料サプライヤー
ラベリング・DRS証跡材質表示、デポジット対象性の記録(Art.12)自社、サプライヤー
サプライヤ証跡レジスタ署名済み宣言、試験成績書、監査報告の一覧サプライヤーとのやり取りの記録
技術文書(Annex VII)に含める主な情報

この中で、自社の設計・購買データだけで完結するのは「包装の識別」と「最小化の設計根拠」の一部にとどまります。残りの多くはサプライヤーへの照会が必要です。

目次を先に決める

技術文書は資料の寄せ集めになりがちで、あとから見返したときに何が揃っていて何が足りないかが分かりにくくなります。作成に着手する前に、目次を先に固定しておくことをおすすめします。

目次の型としては、Annex VIIの区分(識別、最小化根拠、リサイクル性評価、再生材証明、ラベリング・DRS証跡、サプライヤ証跡レジスタ)をそのまま章立てにするのが分かりやすい方法です。各章の冒頭に「揃っているもの」「未取得のもの」を一覧で示しておくと、進捗管理がそのまま文書の一部として機能します。

サプライヤーへの照会が発生する項目

包装の素材構成、重量、再生材含有率、PFAS・重金属の試験成績書は、いずれもサプライヤーが保有している一次データです。日本の包装サプライヤーの多くはEU域外での取引が中心で、PPWRという制度そのものを知らないことが珍しくありません。そのため、単に「データをください」と依頼するだけでは、求めている情報の粒度が伝わらないことがあります。

制度の背景を説明したうえで、求める項目を表形式で明確に示す依頼文が有効です。依頼文の全文と、日本語・英語・中国語のテンプレートは包装サプライヤーにPPWRを説明して情報を引き出す(依頼文つき)にまとめました。

リサイクル性評価と再生材証明の扱い

リサイクル性評価は、包装の主要素材が分離可能かどうか、リサイクル設計に配慮しているかどうかを示す資料です。2026年8月時点で効いているのは評価そのものの実施であり、より高い閾値の適用は2030年以降になります。等級の考え方はリサイクル可能性の等級(Art.6)と2030年の閾値を参照してください。

再生材証明はプラスチック包装が対象で、原料サプライヤーの証明書とバッチ単位のトレースが必要です。原料の仕入れが複数のロットにまたがる場合、ロットごとに証明書を管理する必要があり、自動では出せない項目です。再生材含有率の扱いは再生材含有率(Art.7)とバッチ単位のトレースにまとめています。

SKU単位での情報の持ち方

技術文書は包装のSKU単位で作成・更新されるため、社内で包装材の情報をSKU単位で構造化して保有していないと、作成のたびに一から情報を集め直すことになります。多くの日本企業では、包装材はコストや発注の単位で管理されていても、素材構成やリサイクル性の情報まではSKU単位で保有していません。

この情報の持ち方を整えることが、初回だけでなく次回以降の技術文書作成の負荷を大きく左右します。一度SKU単位で整理しておけば、次に新しい包装材を採用したときも、同じ台帳に追記するだけで済むようになります。SKUごとの情報収集シートの組み方は包装SKUの情報を社内でどう持つかで扱います。

「証明の所在は自社の外にある」という共通認識

技術文書の作成が難しいのは書式ではなく情報収集だという点は、利害の異なる複数の事業者が独立に指摘しています。Sphera傘下のAssentは、自社のブログで技術文書作成の課題を「主にサプライヤーのデータの課題」と表現しています。UL Solutions Japanは、サービス提供の前提条件として「グリーン調達体制が確立し、包装仕様が確定・文書化済みであること」を明示し、証跡収集と試験報告書の取得自体は顧客側の責任であると切り分けています。EY Japanも「技術文書作成の本質は、むしろ情報取得の仕組み作りにある」と述べ、日本の包装サプライヤーがEU域外での取引を前提にしているためPPWRを知らず、要求を説明して引き出す作業が別途発生すると指摘しています。

立場の異なる事業者が同じ結論に至っているという事実は、この課題が特定のベンダーの都合ではなく、構造的なものであることを示しています。技術文書の作成を「ツールを導入すれば解決する」問題として捉えると、実際にはサプライヤーとのやり取りという運用面の負荷が残ったままになります。

自社で完結する部分と、そうでない部分を先に分ける

技術文書の作成に着手する前に、どの項目が自社の既存データで埋められ、どの項目がサプライヤーへの照会を必要とするかを仕分けしておくと、着手後の手戻りを減らせます。包装の型式番号や購買金額といった調達データは自社に既にありますが、素材の重量内訳や試験成績書は、サプライヤーに聞かなければ分からないことがほとんどです。

この仕分けを最初に済ませておけば、サプライヤーへの照会と並行して、自社で完結する部分の作業を進められます。逆に仕分けをせずに着手すると、途中でサプライヤーの回答待ちになり、作業全体が止まってしまうことがあります。着手初日に仕分け表を作るだけでも、後の進捗管理が格段に楽になります。

保管とサプライヤ証跡レジスタ

技術文書は単回使用包装で5年、リユース包装で10年の保管義務があり、当局からの求めに応じて14日以内に提出できる状態が求められます。サプライヤ証跡レジスタ(署名済み宣言、試験成績書、監査報告の一覧)は、この保管義務の中でも特に散逸しやすい部分です。サプライヤーとのメールやWord文書のやり取りを個別に保管するのではなく、一覧表として集約しておくと、当局からの求めに素早く対応できます。担当者が変わっても、誰がいつ何を依頼し、いつ回答を得たかが一覧表から追える状態にしておくことが、実務上の保管義務への備えになります。

技術文書はDoCと同じタイミングで作らなければなりませんか

DoCは技術文書の内容を要約した宣言書という位置づけです。先に技術文書側で一次データを集め、その内容をDoCに転記する順番のほうが、後からの矛盾を避けやすくなります。

サプライヤーが情報を持っていないと言われた場合はどうすればよいですか

サプライヤー自身がPPWRという制度を認識していないことが原因になっている場合があります。制度の背景を説明したうえで、求める情報の粒度を具体的に示す依頼文に切り替えると、回答が得られることがあります。それでも情報が得られない場合は、代替の試験機関に依頼する、または代替の包装材を検討する選択肢が残ります。

技術文書のひな形はどこかで配布されていますか

海外のPPWR対応SaaS事業者がDoCのひな形を無料配布している例がありますが、日本語かつ技術文書の目次まで含めたものは多くありません。目次の組み方は本記事のとおりAnnex VIIの区分をそのまま章立てにする方法が実務的です。

  • packaging
  • formats