適合宣言書(DoC、Declaration of Conformity)は、包装がPPWRの要求に適合していることを事業者自身が宣言する文書です。EU包装規則(EU) 2025/40のAnnex VIIIが、記載すべき10項目を定めています。分量自体は多くありませんが、項目の意味を取り違えると、宣言として不十分なものになります。
Annex VIIIが定める10項目
| # | 項目 | 記載例 |
|---|---|---|
| 1 | 宣言書の固有番号 | 社内の文書管理番号(例:DOC-PK-2026-001) |
| 2 | 製造者(または該当する義務主体)の名称・住所 | 会社名、登記住所、連絡先 |
| 3 | 単独責任の宣言 | 「本宣言は、製造者の単独の責任において発行される」旨の記載 |
| 4 | 包装の一意識別 | 型式・バッチ・シリアル番号など。包括的な記述は不可 |
| 5 | 宣言対象の記述 | 包装の名称、用途、写真や図面への参照 |
| 6 | 適合を宣言する規則の明記 | 「Regulation (EU) 2025/40に適合する」旨の記載 |
| 7 | 適用した整合規格・技術仕様 | 参照した規格番号とその版 |
| 8 | 通知機関情報(該当する場合) | Module Aでは通常不要 |
| 9 | 補足情報 | 必要に応じて追記 |
| 10 | 署名・場所・日付 | 署名者の氏名・役職、署名地、日付 |
このうち実務で最もつまずきやすいのは4番の「包装の一意識別」です。次の節で詳しく扱います。
4番:包装の一意識別で包括記述が不可な理由
「自社が製造するすべての段ボール包装」のような包括的な記述は認められません。DoCは特定の包装、あるいは明確に定義された包装群に対する宣言であることが前提のためです。型式・バッチ・シリアル番号など、対象を一意に特定できる情報を記載する必要があります。
複数のSKUをまとめて1枚のDoCで宣言したい場合は、対象となる型式番号を一覧として明記し、宣言の範囲を限定してください。「今後追加される派生品を含む」といった将来を含んだ記述は避けるべきです。新しい型式が追加されるたびに、DoCも更新する運用を前提にしてください。
3番:単独責任の宣言が意味すること
3番の単独責任の宣言は、Module A(自己宣言)の性質を反映したものです。第三者認証機関の審査を経ていない代わりに、宣言内容の正しさについて事業者自身が全責任を負うことを明文化します。
この宣言は形式的な一文に見えますが、実務上の意味は重いものです。宣言に虚偽や根拠不足があった場合、責任の所在は明確に自社にあります。DoCに署名する前に、裏付けとなる技術文書が実際に整っているかを確認する工程を、社内の承認フローに組み込んでおくことをおすすめします。
8番:通知機関情報は基本的に空欄
PPWRの適合手続はModule A(内部生産管理)が基本であり、第三者認証機関(通知機関)の関与を必要としません。そのため8番の項目は、多くの場合空欄、または「該当なし」の記載になります。Module Aの位置づけは第三者認証は要らない。Module A(自己宣言)の意味と、それでも残る責任で扱っています。
一部の包装(危険物輸送用の包装など)では別の手続が適用される可能性がありますが、一般的な工業製品の包装であれば、通知機関情報を求められる場面は限られます。自社の包装がその例外に該当するかどうか判断がつかない場合は、依頼元、または専門の代行事業者に確認してください。
5番・7番・9番・10番の実務上の注意
5番の宣言対象の記述は、包装の名称と用途を短く書くだけでは不十分になることがあります。写真や図面、仕様書番号への参照を添えると、後から見た第三者にも対象が特定できる記述になります。図面番号だけを書いて図面自体を添付しないと、当局からの照会時に照合できず、宣言の実効性が問われかねません。
7番の適用した整合規格・技術仕様は、包装の種類によって参照する規格が異なります。試験を外部ラボに依頼した場合、そのラボが用いた試験規格の番号と版を正確に転記してください。版が古いまま更新し忘れると、宣言の内容と実際の試験条件が食い違う原因になります。
9番の補足情報は空欄でも構いませんが、包装が特殊な使用条件(低温輸送専用、危険物との併用禁止など)を前提にしている場合は、ここに明記しておくと誤解を防げます。
10番の署名は、実際に宣言内容の責任を負える立場の人物が行う必要があります。担当者レベルの押印で済ませてしまうと、単独責任の宣言(3番)と矛盾する体制になりかねません。誰が署名するかは、DoCを作成する前に社内で決めておいてください。
よくある不備のパターン
これまでに他の事業者が指摘している典型的な不備は、次のようなものです。包装の識別情報が曖昧で、後から対象を特定できない。適用規格の版が更新されておらず、実際の試験条件と一致しない。署名者が宣言の内容を把握しておらず、形式的な押印だけで済ませている。いずれも、DoCを「様式を埋める作業」として扱うことから生じます。
DoCは技術文書の要約という位置づけで作成すると、こうした不備を避けやすくなります。先に技術文書側で素材構成や試験結果を整理し、その内容をDoCの各項目に転記する順番で進めることをおすすめします。
DoCと技術文書の関係
DoCは宣言書1枚で完結する文書ですが、その裏付けとなるのが技術文書(Annex VII)です。DoCの7番(適用した整合規格・技術仕様)や、4番の包装識別情報は、技術文書に記載された内容と整合している必要があります。技術文書の中身は技術文書(Annex VII)に何を綴じるのかにまとめました。
DoCだけを単独で作成し、技術文書を後回しにすると、当局から求められたときに宣言の裏付けを示せない状態になります。DoCの作成と技術文書の整備は、同時並行で進めるのが安全です。
実務の順番としては、まず技術文書側で素材構成・重量・試験成績書といった一次データを集め、そのデータが揃った時点でDoCに転記するほうが手戻りが少なくなります。DoCを先に作ってしまうと、後から技術文書の内容と矛盾が見つかったときに、DoCの再発行まで必要になることがあります。
保管期間と提出への備え
DoCおよび技術文書は、単回使用包装で5年、リユース包装で10年の保管義務があります。当局から提出を求められた場合、14日以内に提出できる状態にしておく必要があります。ファイルの命名規則と保管場所をあらかじめ決めておくと、担当者が交代しても対応が滞りません。DoCの固有番号(1番)と保管ファイルの命名規則を揃えておくと、後から特定の宣言書を探す作業が楽になります。保管の実務は5年/10年の保管義務と、当局要求から14日で出す備えで扱います。
DoCは1つの包装ごとに1枚作る必要がありますか
型式・バッチ・シリアル番号などで一意に特定できる範囲であれば、複数の型式を1枚のDoCにまとめて記載することもできます。ただし「今後追加される派生品を含む」といった包括的な記述は認められません。新しい型式を追加する際は、DoCも合わせて更新してください。
通知機関の審査を受けなくても違反になりませんか
PPWRの適合手続はModule A(内部生産管理)が基本で、通知機関の審査は通常不要です。ただし審査を受けない代わりに、宣言内容の正しさについて事業者自身が全責任を負います。裏付けとなる技術文書を整備しておく必要があります。
DoCのひな形をそのまま使ってもよいですか
ひな形は項目の抜け漏れを防ぐのに有効ですが、4番の包装識別情報や7番の適用規格など、自社の包装に合わせて具体的に記載しなければならない項目があります。ひな形の空欄を埋めずに提出すると、宣言として不十分になります。