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包装規制

包装サプライヤーにPPWRを説明して情報を引き出す(依頼文つき)

「データをください」だけでは動きません。何のための依頼かを説明する段落が、返信率を左右します。

技術文書(Annex VII)の作成で実際に時間がかかるのは、書式を整えることではなく、包装サプライヤーから一次データを集めることです。ところが日本の包装サプライヤーの多くはEU域外での取引が中心で、PPWRという制度名を聞いたことがないことが珍しくありません。制度を知らない相手に、いきなり項目だけを並べた依頼文を送っても、何のための依頼か伝わらず、回答が止まってしまいます。

なぜ「データをください」だけでは動かないのか

chemSHERPAの督促でも同じ構造がありますが、PPWRの場合はさらに一段階前の壁があります。chemSHERPAの依頼であれば、相手も制度名を聞いたことがある可能性が高く、様式さえ示せば作業に入れます。一方PPWRは制定から日が浅く、EU域外中心の取引をしているサプライヤーにとっては、そもそも自社に関係があるのかどうかすら判断がつかない状態です。

EY Japanは、日本企業のPPWR対応の実務を扱った記事の中で「技術文書作成の本質は、むしろ情報取得の仕組み作りにあります」と述べ、日本の包装サプライヤーがEU域外での取引を前提にしているためPPWRを知らず、要求を説明して引き出す作業が発生すると指摘しています。この指摘は、依頼文の設計そのものに直結します。制度の説明を省いた依頼文は、相手にとって「なぜ今さらこんなことを聞かれるのか」という疑問を残したまま止まります。

依頼文に必ず含める3つの要素

有効な依頼文には、次の3つの要素が入っています。

要素中身省くとどうなるか
制度の背景説明PPWRの適用開始日と、自社が負う義務の概要「なぜ聞かれているか分からない」まま止まる
求める情報の一覧素材構成・重量・再生材率・PFAS試験成績書の有無など何をどの粒度で答えればよいか分からず後回しにされる
回答期限と、部分回答でよい旨具体的な日付と、全部揃わなくても送ってよいという断りゼロ回答か、いつまでも待たされるかの二択になる
依頼文に必ず含める3要素

3つ目の「部分回答でよい旨」は見落とされがちですが、督促テンプレートの設計思想と同じで重要です。すべての項目が揃うまで回答を待たれると、期限に間に合わなくなります。まず答えられる範囲から回答してもらい、残りを追って集める運用のほうが、結果的に早く情報が揃います。

求める情報の一覧(テンプレートの骨格)

依頼文に含める項目一覧は、次の内容を基本形にしています。

項目求める粒度備考
包装材の種類一次包装/二次包装/輸送包装の別、SKU・型式番号対象範囲を明確にするための起点
素材構成と重量素材ごとの重量(g)と材質記号複合材はレイヤーごとに分けて依頼する
再生材含有率プラスチック包装のみ。重量に対する比率と証明書の有無バッチ単位のトレース資料があれば添付を依頼
PFAS・重金属の含有食品接触の有無、試験成績書の有無試験成績書(COA)の写しがあれば依頼に含める
リサイクル可能性の情報主要素材の分離可否、設計上の配慮の有無包装設計図・仕様書があれば添付を依頼
PPWR対応でサプライヤーに求める情報の一覧

この一覧を土台に、日本語・英語・中国語の3言語で依頼文を作成したものが、配布資料D9「包装サプライヤー向け PPWR情報依頼テンプレート」です。制度説明の段落と要求項目表をそのまま使える形にしてあります。

日本語・英語・中国語で用意する理由

督促テンプレート(D2)と同じ考え方で、英語・中国語は日本語の直訳にしていません。日本語の丁寧な依頼文をそのまま機械翻訳すると、敬語の層が失われて命令調になったり、逆に回りくどくなって要件が伝わらなくなったりします。それぞれの言語で、受け取った担当者が最短で動ける書き方に組み直す必要があります。

海外の包装サプライヤーだけでなく、国内サプライヤーの海外生産拠点とやり取りする場合にも、英語・中国語のテンプレートは使えます。取引先の窓口がどの言語で読むかによって、使う版を選んでください。

督促テンプレート(D2)との違い

サプライヤー対応というと、返ってこない調査依頼への督促テンプレート(返ってこない調査依頼の督促テンプレート3段階)を思い浮かべる読者が多いはずです。この依頼文とD2の督促テンプレートは、狙いが異なります。

D2の督促テンプレートは、依頼をすでに送った後、返信が来ないときに段階を追って催促するためのものです。前提として、相手は依頼の内容自体は理解しているものの、優先順位が上がらずに止まっている状態を想定しています。一方、PPWRのサプライヤー依頼は、そもそも相手が制度自体を知らない可能性が高い、依頼の初回送付段階を想定したものです。

実務では、この依頼文(初回)を送って一定期間反応がなければ、D2の督促テンプレートの考え方(段階を追ったリマインド)に切り替えるという使い方になります。両者を組み合わせることで、初回の理解不足と、その後の優先順位の低さという、2つの異なる壁に対応できます。

同じ相手に何度も送る文面が変わらないと、受け取った側は「また同じ依頼が来た」としか感じません。初回は制度説明を厚めに、2回目以降は進捗確認に絞るというように、送るたびに文面の役割を変えることが、返信につながる工夫になります。

使い方の実践

依頼文を送る前に、自社側で対象となる包装材のSKU・型式番号を一覧化しておくと、依頼文の該当箇所(対象品番・型式)を具体的に埋められます。対象が曖昧なまま「御社の包装材について教えてください」と送ってしまうと、相手も何を調べればよいか分からず、回答が遅れる原因になります。

複数のサプライヤーに同時に依頼を送る場合は、依頼文の求める情報の一覧(5項目)のうち、どの項目を優先的に確認したいかを社内で決めておくと、部分回答が来た際の判断がぶれません。すべての項目が必須というわけではなく、自社の製品がEU向けに出荷される可能性の高さに応じて、優先度を調整して構いません。

回答が得られなかったときの代替策

制度を説明しても回答が得られない場合、代替策は限られます。まず、同じ素材・同等品を扱う別のサプライヤーに切り替える。次に、第三者の分析ラボに包装材そのものを持ち込み、PFAS・重金属の含有を確認する。この場合の費用感は包装材のPFAS・重金属分析はいくらかかるか(2026年実勢)にまとめる予定です。

サプライヤーへの依頼と並行して、社内で保有している既存の仕様書や、過去に取得した試験成績書がないかも確認してください。一度取得した資料が社内のどこかに眠っていることは珍しくありません。品質保証部門が過去にグリーン調達基準への対応で取得した資料の中に、そのまま使える情報が含まれている場合もあります。

分析ラボに依頼する場合、いきなり個別物質のターゲット分析を頼むと費用がかさみます。全フッ素スクリーニングのような段階的なアプローチから始めるほうが、費用を抑えながら実態を把握できます。試験法の選び方はPFAS試験法が統一されていない。全フッ素スクリーニングから始めるで扱う予定です。

依頼文はどのタイミングで送るべきですか

取引先からPPWR対応を求められた初日、あるいはそれ以前の準備段階で送るのが理想です。技術文書の作成には情報収集の日数がかかるため、依頼の着手が遅れるほど、回答期限との調整が難しくなります。初日の動き方は取引先から「PPWR対応の書類を出せ」と言われた初日にやることにまとめています。

依頼文の制度説明の段落は削ってもよいですか

削らないことをおすすめします。相手がEU域外中心の取引をしている場合、制度説明がないと「なぜ聞かれているか分からない」まま止まってしまいます。少し長くなっても、背景説明を残したほうが結果的に回答率が上がります。

サプライヤーから「対応できません」と断られた場合はどうすればよいですか

別のサプライヤーへの切り替え、または第三者の分析ラボへの依頼が代替策になります。断られた理由が「制度を知らないから」なのか「体制が整っていないから」なのかを確認すると、次の一手を選びやすくなります。

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